職員室でAIの話をしても、反応が薄い。
自分は所見も学年便りも単元計画もAIで回せるようになった。でも隣の席の先生には広がらない。何をどう言えば伝わるのか分からないまま、気づけば「AIの人」で終わっている。

自分は使えるようになったけど、
人に広めるとなると自信がないなあ…。

うまくいくかどうかは、話し方より
「何を題材にするか」で決まるよ。
小学校で担任をしながら、私も同じところで止まっていました。今年、勤務校の校内研修でAIを扱う機会をもらって、答えが少し見えました。AIの研修をしないことです。代わりに、今ある校内研究の柱に、手段としてAIを乗せる。
その研修では、参加した先生20人弱が全員、AIで単元計画を作って持ち帰りました。パソコンが苦手な先生も、AIをその日はじめて触った先生もです。
この記事では、そのときの段取りと、途中で止まった3か所、そして研修のあと誰が使い続けて誰が使わなかったのかを書きます。読み終えたら、次の校内研修で何を提案すればいいかが決まります。
- AIの研修を「AIの研修」にしないほうがうまくいく理由
- 20人弱が全員作れた、1時間弱の研修の中身
- 研修が止まった3か所と、その避け方
AIを広める研修は、AIを主役にしないほうがうまくいく
AIを広めたいなら、「AIの研修」をしないほうがいい。今ある校内研究の柱に、AIを手段として乗せる。順番はこれだけです。
理由は単純で、「AIを覚えること」は先生にとって目的にならないからです。目の前の仕事が進まないものに、放課後の時間は使えません。
私の勤務校では、校内研修の柱が決まっていました。単元計画を作り、子どもといっしょに学習内容を確かめながら学ぶことで、深い学びを目指す。この柱にAIを乗せました。
だから当日の研修は、看板としては「AIの使い方」ではありません。「単元計画をどう作るか」の研修です。その手段としてAIが出てくる。先生たちにとっては、いつもの校内研究の続きでした。
私の実感では、ここを逆にすると広がりません。AIが目的になった瞬間、それは本業とは別の、新しく増えた仕事になります。忙しい人ほど手が伸びなくなる。
20人弱が全員作れた、1時間弱の研修の中身

研修で説明しても、
その場だけで終わっちゃうんだよね。
研修でやったことは3つです。中でも結果を分けたのは、3つ目の「その場で全員に作ってもらう」でした。
時間は1時間弱。そのうち、説明しながら実際にパソコンを触ってもらった時間がのべ50分です。私が事前に準備したのは、スライド資料とカスタム指示で、15分程度でした。
1. スライドで、先にゴールを見せる
最初に、これから何ができるようになるかを見せました。単元名と学年と教科を伝えると、単元計画の原案が出てくる。その画面を先に見せます。
見せる順番は、完成品が先です。手順から入ると、何のためにやっているのか分からないまま操作だけが増えます。
2. カスタム指示を、こちらで用意して渡す
カスタム指示(AIに毎回覚えさせておく前提条件)は、私が作ったものをそのまま渡しました。研修の場で一人ひとりに考えてもらうことはしていません。
指示文を自分で書くのは、慣れてからで十分です。最初の1回は、うまくいくと分かっている指示をそのまま使ってもらったほうが早い。
私が普段使っているカスタム指示の中身と作り方は、【AI時短術④】AIに単元計画を任せたら、子どもと向き合う時間が戻ってきたに書きました。
3. その場で、全員に作ってもらう
いちばん大事なのがここです。説明で終わらせず、その場でパソコンを触ってもらいました。
結果として、参加した20人弱の先生が全員、簡易的な単元計画を作成できました。パソコンが苦手な先生も、AIをその日はじめて触った先生も作れています。
聞いただけの研修は、翌日には消えます。手を動かして、自分の名前の入った成果物を1つ持ち帰る。研修がその後に残るかどうかは、たぶんここで決まります。
つまずいたのは、AIの操作ではなかった
研修中に止まった場所は3つありました。どれもAIの使い方そのものではありません。
- アクセス権の許可を求められる
- Word形式に変換するのが難しい
- AIが出してきた文章の言葉が難しすぎる
1つ目は、画面にアクセス権の許可を求める表示が出たことです。全員がそこで止まりました。使い慣れていれば数秒で通過する場面ですが、はじめての人は「何か悪いことをしたのでは」と手が止まります。
2つ目は、できた単元計画をWord形式に変換するところです。AIの画面の中で完成しても、学校の書類として使うにはWordに移す必要がある。この一手間が思ったより難しかった。
3つ目が、いちばん考えさせられました。AIが出してきた単元計画の文章が、言葉が難しすぎたのです。もっともらしいけれど、そのまま学校で使うには硬い。
3つ目は事故ではなく、AIの性質そのものです。だからこそ研修の場で見せておく価値がありました。出てきたものをそのまま提出するのではなく、自分の言葉に直す。その前提を、失敗ではなく仕様として共有できます。
1つ目と2つ目は、事前に潰せます。研修の前に自分で一度通してみて、止まる場所にスライドを1枚足しておく。それだけで研修は止まりません。
使っていない先生の壁は、スキルではなく役割だった
研修のあとも単元計画を作り続けているのは、6人ぐらいです。20人弱のうちの6人。
なぜこの6人が続いているのか。私はこう見ています。単元名と学年と教科を伝えるだけで原案ができてしまうので、負担感がほとんどない。だから忙しい日でも手が伸びる。
問題は、使っていない残りの先生たちです。私は最初、操作が難しかったのだろうと思っていました。でも違いました。

使ってくれない先生は、
やる気がないのかな?

それが、そういう話じゃなかったんだ。
使っていない先生は、通級による指導の担当だったり、担任ではなかったりする先生でした。つまり、単元計画を作る必要がない立場の人です。
やる気の問題でも、スキルの問題でもない。そもそも用がなかった。
これは私にとって発見でした。教員の生成AI活用について調べると、課題としてよく挙がるのは「教員間のスキル差」です。全国の教職員328名に聞いた民間調査でも、導入を阻む組織的な壁として「教員間の意識・スキルの差」を挙げた人が46.3%と上位に入っています(アルサーガパートナーズ「生成AI活用実態調査2026」2026年5月実施。同社の発表なので、数字は割り引いて読んでいます)。
でも私の職員室で起きていたのは、スキル差ではなく役割の差でした。
そう考えると、広める側がやることは変わります。もっと分かりやすく説明する、ではありません。相手の仕事に紐づく用件を選ぶことです。
裏を返せば、この進め方が向かない場面もあります。担任以外の先生が多い場では、単元計画は共通の用件になりません。その場合は、その人たちの仕事に合う題材を別に立てる必要があります。全員に1つの題材で届かせようとすると、そこで無理が出ます。
ちなみに文部科学省が2025年度に行った調査では、校務で生成AIを活用する教職員が半数以上いる学校は約17%だったと報じられています(時事通信、2026年6月11日)。国は2027年度までに50%を目標に掲げています。うちは20人弱のうち6人なので、割合でいえば3割ほど。
ただ、この数字を追いかけることにはあまり意味を感じていません。分母には、その仕事を持っていない先生も入っているからです。
広めるときに、いつも伝えている3つ
人にAIを勧めるとき、私が言うことは3つだけです。
- 個人情報の扱いに気をつけること
- まずは触ってみること
- いきなり100点の答えは出ないこと
1つ目は説明が要らないと思います。子どもの名前やクラス、学校名は入れない。所見であれば「Aさん」に置き換えれば十分です。
2つ目は、説明を短く切り上げるための言葉でもあります。仕組みの話を丁寧にするほど、聞いている人は自分から遠い話だと感じます。3分説明するより、1回触ってもらったほうが早い。
3つ目が、続くかどうかを分けます。AIは一発で完成品を出してくれません。出てきたものを直して使う。この前提を先に言っておかないと、1回目の出力を見た人が「使えない」と判断して、そこで終わります。
研修で3つ目を言っておいたおかげで、単元計画の言葉が難しすぎたときも、場の空気が「失敗」になりませんでした。
長い説明は要りません。この3つだけです。
まとめ
広める側でやったことを一言にすると、AIを主役にしなかったことです。校内研究の柱に乗せ、その場で作ってもらい、相手の仕事に紐づく題材を選ぶ。
研修の日、先生方からこんな言葉をもらいました。
「こんなに簡単にできるんだ」
「すごい」
「昔、こんなことができたらいいなと夢を見ていたけど、それが実現したね」
3つ目の言葉が、いちばん残っています。ずっと諦めていたことが、手元で動いた瞬間の声だったと思います。
私の学校で確かめられたのは、6人が単元計画づくりを続けられる程度には負担が下がった、というところまでです。それでも、自分ひとりが速くなるより、職員室ごと速くなったほうが、返ってくる時間は大きいはずです。その時間を、子どもを見る時間に回したい。
ただ、これは1人ではできません。研修の時間を確保しないと始まらないし、時間を確保するには管理職の判断が要ります。AIに詳しい人、研修主任、管理職。チーム学校で動く話です。
だから最初の一歩は、プロンプトを配ることではありません。研修主任か管理職に、研修の時間を取れないか相談することです。

1人で抱えなくていいんだよ。
まずは「時間ください」って言うところから。
子どものため、自分のため、未来の学校のために、広めてほしいと思っています。
※補足:今回はGeminiで進めましたが、個人的には Gemini Notebook(2026年7月に NotebookLM から名称変更)のほうが、学校の資料を読ませて使うには向いていると感じています。
このシリーズでは、ほかにも教員のルーチン業務をAIで時短する記事を書いています。


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